L'EQUIPE紙からツール・ド・フランス特集記事の取材を受けました ~今中大介~

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INTERMAX情報 13年06月27日

新城幸也選手の出場で注目のツール・ド・フランス。彼の実力からすると、悲願のステージ優勝を成し遂げる可能性は大きい。新城選手がエスケープグループに入り、メイン集団が追い切れない状態になったらチャンスです。話題のクリス・フルームを中心とした総合争いも熾烈になりそう。まもなくファンの皆さんもハラハラドキドキの3週間が始まります。
 今回、ツール・ド・フランスが100回記念大会ということで、産みの親であるL'EQUIPE紙(初期は前身の「ロト紙」)が取材に来られました。



レッキップ紙、ツール100回記念特集の取材 向かって右から記者のフィリップさん、今中、三浦恭資さん、通訳の田村さん、カメラマンのフレデリックさん。三浦さんはシマノレーシングの先輩で海外のレースに挑んだ草分け的存在。娘さんがASOの広報担当のクリストフさんと結婚されていて、今回ご一緒することに。今でも選手時代と変わらず実にパワフル

スタート準備が出来ていないのに、ロッシュ(1987ツール覇者)に手を引かれてヴィラージュの似顔絵コーナーへ チームスタッフに「もう時間がないから」とお願いしていても取材の毎日。今考えるとありがたい話です
Photo: Frederic Mons

レッキップ紙、ツール100回記念特集の取材 ヴィラージュの似顔絵コーナー
Photo: Frederic Mons


2011の覇者カデル・エヴァンスが育ったアボリジニの村から日本へ


 今回、特集記事のために来られたのは、フランスのL'EQUIPE紙の記者のフィリップ・ルガさんとカメラマンのフレデリックさんの2人。取材内容はツール・ド・フランスに関わる世界5大陸を取り上げたもので、直前に訪れたオセアニア大陸では、カデル・エヴァンスが育ったアボリジニの村まで取材に行ったそうです。紙面を飾ると思われる写真を見せて頂きましたが、赤い土の大地に、木組みの家が建っていて、人々も実に素朴な感じ。どこまでも駆けっこしたくなるような雰囲気がありました。


 「アジア大陸については日本しかない」と、フィリップさんは思ったそうです。「成長という意味で別の国も候補に挙がったけど、僕は日本を選んだんだ」と言って頂きました。本当にありがたいですね。1996年のツールでは僕を取材されたそうで、懐かしそうに当時の写真をカバンから取り出して渡してくれました。もちろん新城幸也選手や別府史之選手が大活躍しているのも、日本が選ばれた理由です。
 ここに掲載の写真は、取材の際に頂いたものの一部です。96年当時の写真ばかりなので、どうしようかと考えましたが、取材の趣旨に触れる部分なので紹介しました。



初の日本人で話題になったけど、同時にスパイじゃないかとも報道された?


 フィリップさんは日本のレースの成長の過程に興味津々。ツール出場のいきさつや現在の選手たちの状態などの質問が次々に出てきます。
 中には、「当時、日本人初のツール出場選手としてかなり話題だったよね。初日のプロローグはヘリコプターが追っかけたからね。でも、それと同時にイマナカは日本から来たスパイだってニュースが出たのを知ってる?」という質問も。それは出場後に何となく聞いたけど、詳しいことは知らないままでした。フィリップさんが言うには、どうやら新型デュラエースのテストをしていたことや、僕がレース中に走りながら写真を撮っていたことから、そんな途方もない報道に至ったらしい。


 なぜ写真を撮っていたか?それに関しては、サイクルスポーツの隔月連載用に仕方なく自分で撮影していただけのこと。せっかくなのでプロの様子を伝えようと思い、落車で壊れてもいい使い捨てカメラを携帯していた訳です。お蔭でポケットはいつもパンパンでしたが。まあ、自分で撮っている選手なんて誰もいないから、面白がられたのかもしれないですね。それにスパイなら最低でもミノックスあたりを使っていたでしょうし。

ツールのスタートライン。横はこの年から6回連続でポイント賞を取ることになるエリック・ツァベル
Photo: Frederic Mons

ツールは落車が多く、エースのリュック・ルブランを牽引することも多かった。僕の後ろは山岳アシストのグェリーニ(99ラルプ・デュエズ区間優勝)
Photo: Frederic Mons

ポイント賞を6回連続で取るツァベル Photo: Frederic Mons 落車対応の牽引
Photo: Frederic Mons


特に第1ステージは焦りました。総合狙いのルブランがラスト30kmで観客に突っ込んで脳震盪。オランダの強烈な向かい風の中を、死にもの狂いで牽引して集団復帰させました。さすがに疲労困憊です
Photo: Frederic Mons

ゴール直後のフジTVインタビュー
Photo: Frederic Mons

脳震盪のルブランを復帰させ疲労困憊 Photo: Frederic Mons フジTVインタビュー
Photo: Frederic Mons


翌年パリ~ルーベで優勝することになるフレデリック・ゲドン。僕と一緒で平坦の牽引役。ポルティに来てカプチーノが好物に。「午後はお婆ちゃんしか飲まないんだぞ」と言っていた他のメンバーも、全員が夕食後にも楽しむようになりました
Photo: Frederic Mons

パリ~ルーベ優勝のゲドンもアシスト Photo: Frederic Mons




愛嬌いっぱいのカメラマンのフレデリックさん


 一緒に来られたカメラマンのフレデリック・モンスさんも、当時からバイク移動のカメラマンをしていて、フィリップさんが渡してくれた写真を見ながら「これは僕が撮ったんだよ。これもそう」と嬉しそう。放送で時々バイクのカメラマンを見るので、「どのヘルメットをかぶっている?もしかしてブラックのMOMO?」と聞くと、「そう!その通り!」とニッコリしていました。国際映像を見ている方は探してみると面白いかも。


 撮影は"日本らしさ"を求めて大阪城にも行きましたが、採用されたのは千日前通でした。夕暮れ時にフラッシュを焚いての撮影が効果的で、僕らの両サイドにほど良くネオン看板が入っていて、なかなかの力作でした。
 下からあおった写真を撮ろうと、カメラマンのフレデリックさんが道路に横になると、周りのお店からも「何やろ?」と女の子が出てきて、一緒になって道路に寝転んでカメラを持つポーズ!板前さんまで出てきて同じ格好をしたのには、思わず吹き出しました。さすが、大阪のノリの良さは違います!フレデリックさんもこれには苦笑い。



撮影で訪れた大阪城。石段に上ってあれこれと構図を考えているところ

撮影で訪れた大阪城




記者のフィリップさんもお気に入りの名選手、リュック・ルブラン


 僕がアシストしたポルティのエースのリュック・ルブランは、世界チャンピオンになってポルティに移籍してきた選手。そのあまりの陽気さは、イタリア人が呆れるほどで、ディナーはいつもコメディーショーを見ているような感じ。J SPORTの「ツール・ド・フランス 第100回記念ドキュメンタリー ザ・レジェンド 2」では、TGVの操縦席で運転手の物まねをする彼が映っていましたが、これは真面目に演じている様子を映したもの。いつもは爆笑の渦を作っていて、僕はお笑いの天才だと思っていました。


 ツールでは落車の影響もあり個人総合6位で終わってしましましたが、マドレーヌ越えのアルプス山頂ゴールステージで優勝してくれて、それがアシストである我々への大きなプレゼントになりました。延々と続く牽引とアタックの対応と応酬、伝令やボトルやウェア運び、果てはトイレの手伝いまで。大変だったけど、エースの為に走ることができる幸せを感じるツールになりました。



ツールのチームプレゼンテーション控室。エースのリュック・ルブランとは様々なレースを走りましたが、いつも不思議なくらい仲良しでした
Photo: Frederic Mons

健康診断でドクターから聴診器を奪って診察するルブラン。話題提供には事欠かない人気者
Photo: Frederic Mons

ツールのチームプレゼンテーション控室 Photo: Frederic Mons 聴診器を奪って診察するルブラン
Photo: Frederic Mons


サイクルスポーツの世界選手権特集記事

世界選手権で優勝(94イタリア シチリア)、翌年のシーズン途中にポルティにやって来たリュック・ルブラン 写真はブロマイド

サイクルスポーツの世界選手権特集記事 ポルティにやって来たリュック・ルブラン



 ルブランの話をしていると、フィリップさんが「そういえば・・・、イマナカは僕の子供なんだって、彼が言っていたのを思い出したよ!」と、膝を叩いてニッコリ。嬉しいことがあると頭をなでたり頬ずりしたりすることがあり、何年か前にユーロバイクで合った時も頬ずりをされて、少し恥ずかしい思いをしましたが、フィリップさんの話で納得しました。
 今回、こうしてL'EQUIPEのお2人と話をしていると、新城選手と別府選手を応援しに行った2009年のように、ぶらりと現場に行ってみたくなりました。もし記事が入手できれば、ここに追加でアップしますね。


 100回目のツール・ド・フランス、僕も皆さんと一緒にメディアの映像を含めた報道を見ながら、楽しんでいきたいと思います。そうそう、フレデリックさん探しを忘れずに!



L'EQUIPE
http://www.lequipe.fr

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